毎日、仕事が終わる頃にはヘトヘトで「自分は保育士に向いていないのでは?」と悩んでいませんか。
保育士は想像以上にハードな肉体労働ですが、体力がないからと諦めるのはまだ早いです。
本記事では、体力が追いつかない原因を整理し、無理なく続けられる体力作りの方法や、身体への負担を減らすコツを詳しく解説します。
保育士の仕事が「体力勝負」と言われる過酷な現実
保育士という職業は、子どもたちの成長を間近で見守ることができる素晴らしい仕事です。
しかし、その華やかなイメージの裏側には、非常にハードな肉体労働という側面があります。
多くの現役保育士が「思っていたよりもずっと体力がいる」と口を揃えます。
まずは、なぜ保育士の仕事がこれほどまでに体力を消耗させるのか、その具体的な要因を整理してみましょう。
子供の抱っこやおんぶによる身体への大きな負担
保育現場において、抱っこやおんぶは日常茶飯事です。
乳児クラスであれば、泣いている子をあやしたり、寝かしつけたりするために長時間抱き続ける必要があります。
また、幼児クラスであっても、怪我をした時や甘えたい時など、10キログラムから20キログラム近い子どもを抱き上げる場面は少なくありません。
この「重量物を持ち上げる」という動作が、保育士の腰や膝、手首に多大な負荷をかけます。
特に適切な姿勢を保てないまま急に持ち上げたり、片方の腕だけで支えたりする癖がつくと、慢性的な腰痛や腱鞘炎を引き起こす原因となります。
蓄積された疲労は、一晩眠っただけではなかなか解消されず、翌日のパフォーマンスに影響を与えてしまうのです。
特に一日のうちに何度も繰り返される抱っこは、じわじわと筋肉を疲弊させ、夕方には立っているのも辛いほどの疲労感をもたらします。
常に動き回り、一瞬も目が離せない活動量
保育士の仕事は、デスクワークのように座って作業する時間は極めて限定的です。
子どもたちの安全を守るためには、室内でも園庭でも常に動き回り、全体に目を配らなければなりません。
散歩の引率では、子どもたちのペースに合わせながら、安全確認のために周囲を素早く移動する必要があります。
これに加えて、子どもたちが活発に動き回る時期には、鬼ごっこやボール遊びなど、保育士自身も全力で身体を動かす場面が多くなります。
また、行事の準備や日々の保育の中で、重い備品を運んだり、装飾を施したりといった作業も並行して行われます。
活動量は一般的な事務職の数倍に及ぶと言われており、一日の歩数が1万歩を優しく超えることも珍しくありません。
このように、持続的な活動が求められることが、体力的な限界を感じさせる大きな要因となっています。
夏場は暑さによる消耗も激しく、冬場は寒さで身体が強張るため、一年中体力を削りながら働いているといっても過言ではありません。
中腰や膝をつく姿勢が続くことによる関節の疲労
保育士の視点は、常に子どもたちの高さに合わせる必要があります。
そのため、中腰での作業や、床に膝をついての対応が非常に多くなります。
食事の介助、オムツ替え、着替えの手伝いなど、どれも腰をかがめた姿勢で行うものです。
大人の身体にとって、この低すぎる位置での作業は非常に不自然で、骨格への歪みを生じさせやすいのです。
この「不自然な姿勢の維持」は、筋肉に大きな緊張を強います。
特に膝を床につく動作が繰り返されることで、膝の痛みを感じる保育士も少なくありません。
また、低い椅子に座っての事務作業も、股関節や腰への負担となりやすく、全身の血流を悪化させる一言となります。
こうした姿勢の積み重ねが、慢性的な「だるさ」や「痛み」として現れるのです。
さらに、掃除や環境整備も低い姿勢で行われることが多く、全身の関節が悲鳴を上げている状態に気づかないまま働き続けてしまうことも珍しくありません。
「自分は保育士に向いていない」と感じる原因は体力不足?
体力が限界に達すると、人は冷静な判断ができなくなります。
身体が動かないことへの焦りが、次第に「自分はこの仕事に適性がないのではないか」という自己否定につながってしまうことがあります。
しかし、それは能力や愛情の問題ではなく、単にエネルギー不足の状態である可能性が高いのです。
保育士としての適性を問う前に、まずは自分のエネルギーマネジメントを見直すことが重要です。
疲れが抜けないことによる精神的な落ち込み
身体の疲れと心の状態は、密接に関係しています。
激しい肉体疲労が続くと、脳の働きも鈍くなり、ポジティブな思考が難しくなります。
セロトニンなどの幸福感を感じるホルモンの分泌も、極度の疲労状態では妨げられがちです。
本来であれば笑って受け流せるような子どもたちのいたずらに対しても、ついイライラしてしまったり、余裕のない対応をしてしまったりすることが増えるかもしれません。
このような状態が続くと、「子どもが好きなはずなのに、優しくできない自分」を責めてしまい、メンタルヘルスを損なう原因となります。
つまり、体力の限界が心の限界を招いているのです。
「向いていない」と結論を出す前に、まずは自分の身体がどれほど疲弊しているかを客観的に見つめ直す必要があります。
十分な休養が取れた後に同じように感じるかどうかを確かめるまで、大きな決断は控えるべきでしょう。
周りの保育士と比べてしまう焦り
同じ職場の同僚がハツラツと動いている姿を見ると、なおさら自分の体力のなさを実感し、落ち込んでしまうことがあります。
特に、ベテランの保育士や、運動習慣のある同僚と自分を比較してしまい、「なぜ自分だけこんなに疲れるのだろう」と孤独感を感じてしまうこともあるでしょう。
しかし、周囲のスタッフも実は無理をしている場合があったり、あるいは長年の経験から「力の抜き方」を習得していたりするものです。
体力の基準は人それぞれであり、これまでの生活背景や体格、筋肉量も異なります。
また、ベテラン保育士は、どの子に手を貸し、どの子を見守るかという優先順位が明確なため、無駄な動きが少ないという特徴もあります。
他人と比較して落ち込むのではなく、まずは「昨日の自分より少しだけ楽に動けるようになること」を目指すのが建設的です。
自分の身体の特性を理解し、自分なりのペースを掴むことが、長く働き続けるための第一歩となります。
保育士が長く続けるための「体力作り」の実践方法
「体力がないなら、作ればいい」と言うのは簡単ですが、日々忙しい保育士にとって、ジムに通ったり激しい運動をしたりする時間を確保するのは至難の業です。
大切なのは、日常生活の中に無理なく取り入れられる習慣を作ることです。
長期的な視点で、少しずつ「疲れにくい身体」を作っていきましょう。
ここからは、具体的にどのようなアプローチが有効かを詳しく説明します。
毎日の生活習慣を根本から整える(睡眠と食事)
体力作りの基本は、運動よりもまず「休養」と「栄養」です。
どんなに筋トレをしても、土台となる身体が整っていなければ効果は半減します。
むしろ、疲労が溜まった状態での激しい運動は、怪我のリスクを高めることにもなりかねません。
・質の高い睡眠を確保する
睡眠は最強の疲労回復手段です。寝る直前のスマートフォン利用を控え、脳をリラックスさせましょう。
また、シャワーだけで済ませず、40度前後のお湯に浸かって体温を一度上げてから寝ることで、深い眠りに入りやすくなります。
短時間しか眠れない日があっても、寝具にこだわったり、アロマを活用したりして、睡眠の質を上げる工夫をしましょう。
朝起きた時のスッキリ感が変われば、一日の体感温度も変わってきます。
・バランスの良い食事とタンパク質の摂取
筋肉を修復し、体力を維持するためにはタンパク質が欠かせません。
肉、魚、卵、大豆製品を意識的に摂取しましょう。保育士は給食を子どもたちと一緒に食べることが多いですが、それだけではタンパク質が不足する場合もあります。
朝食や夕食でしっかりと補いましょう。
また、疲労回復を助けるビタミンB群や、免疫力を高めるビタミンCも積極的に摂ることが推奨されます。
鉄分不足も疲れやすさの大きな原因となるため、レバーやほうれん草、サプリメントなどを活用するのも一つの手です。
朝食を抜くと一日のエネルギーが不足するため、手軽に食べられるバナナやヨーグルトだけでも口にする習慣をつけましょう。
現場で役立つ筋トレメニュー(スクワット、体幹)
保育士に必要なのは、ボディビルダーのような大きな筋肉ではなく、自分の体重と子どもの体重を支え続ける「実用的な筋力」です。
特に下半身と体幹を鍛えることで、重いものを持ち上げる際や、長時間の立ち仕事でも疲れにくい身体を手に入れることができます。
以下のメニューを、無理のない範囲で生活に取り入れてみてください。
・正しいフォームでのスクワット
スクワットは「キング・オブ・エクササイズ」と呼ばれ、全身の筋肉を効率よく鍛えられます。
特に、子どもを抱え上げる際に重要な太ももとお尻の筋肉が鍛えられます。
ポイントは、膝がつま先より前に出ないようにし、椅子に座るようにお尻を後ろに引くことです。
これにより、膝への負担を避けつつ筋肉を刺激できます。
歯磨き中やテレビを見ている時の5回から10回だけでも、毎日続ければ数ヶ月後には下半身の安定感が劇的に変わります。
・体幹トレーニング(プランク)
体幹が安定すると、姿勢が崩れにくくなり、腰への負担が劇的に軽減されます。
床に両肘をつき、身体を一直線に保つ「プランク」は、数十秒行うだけで腹筋の深層部を鍛えることができます。
腰痛予防に直結するため、寝る前の習慣にすると良いでしょう。
体幹がしっかりしてくると、子どもが急に飛びついてきた時などにも、バランスを崩さず踏ん張れるようになります。
柔軟性を高めるストレッチ
筋肉が硬いと、血行が悪くなり疲労物質が溜まりやすくなります。
また、怪我のリスクも高まります。柔軟性を高めることは、体力を底上げすることと同じくらい重要です。
特に、強張った筋肉をほぐすことで、翌日に疲れを持ち越さない身体になります。
・股関節のストレッチ
中腰の姿勢が多い保育士にとって、股関節周りの柔軟性は必須です。
お風呂上がりに床に座り、足の裏を合わせて膝を上下に揺らす「合蹠(がっせき)のポーズ」などで、股関節をほぐしましょう。
これにより、骨盤周りの血流が改善し、足のむくみ解消や腰痛の緩和にもつながります。
股関節が柔らかくなると、低い位置での作業もスムーズに行えるようになります。
・肩甲骨周りのストレッチ
抱っこやおんぶで巻き肩になりがちな保育士は、肩甲骨が外側に開きっぱなしになり、酷い肩こりを引き起こします。
両手を肩に置き、大きく円を描くように肘を回して、肩甲骨をしっかりと動かしましょう。
これにより、上半身の緊張が解け、深い呼吸ができるようになります。
休憩時間や、子どもたちが昼寝をしている間のちょっとした時間に行うのが効果的です。
肩こりが軽減されると、それだけで全身の軽さが変わります。
身体を壊さないための「省エネ」な動き方のコツ
体力をつける努力と並行して、「今ある体力をいかに温存するか」という視点も大切です。
賢く動くことで、一日の終わりの疲労感を半分に抑えることも可能です。
身体へのダメージを最小限に抑える「プロの動き」を意識してみましょう。
正しい抱っこの仕方と身体の使い方
力任せに子どもを抱き上げると、すぐに限界が来ます。
身体の構造を理解した「省エネ」な動きを身につけましょう。
自分の筋肉を酷使するのではなく、骨格で支えるようなイメージを持つことが重要です。
・重心を低く保ち、子どもの身体を密着させる
子どもを抱き上げる時は、まず自分がしっかりと膝を曲げて腰を落とします。
腕の力だけで持ち上げようとせず、子どもの身体を自分の身体に引き寄せ、密着させた状態で脚の力を使って立ち上がります。
重心が離れるほど、腰への負荷は物理的に増大します。子どもを抱いた後も、できるだけ自分の骨盤の上に乗せるような感覚で保持すると、腕の疲れが軽減されます。
・「テコの原理」を意識する
床から子どもを立たせる際も、全てを持ち上げるのではなく、まずは自分の膝に乗せたり、子どもの手を持って自力で立つのを促したりして、補助に徹する意識を持つと負担が減ります。
また、座っている子どもを抱え上げるのではなく、まずは自分と同じ高さまで登らせてから抱えるなど、物理的な高低差を減らす工夫も有効です。
日々の何気ない動作一つひとつで「いかに楽をするか」を考えることが、長期的な体力維持に繋がります。
道具や環境を工夫して負担を減らす
自分の身体ひとつで何でも解決しようと思わないことが大切です。
現代の保育現場では、身体をケアするための便利なツールも増えています。
・踏み台や補助器具の活用
高いところの荷物を取る際や、掲示物を作る際は、無理に背伸びをせず安定した踏み台を使いましょう。
ほんの少しの背伸びが、足首やふくらはぎの疲労を蓄積させます。
また、腰痛がひどい場合は、適切なサポーターやコルセットを着用することも検討してください。
これは恥ずかしいことではなく、仕事を続けるための大切なプロテクトです。予防的に装着することで、大きな怪我を防ぐことができます。
・適切な靴選び
保育士にとって、靴は非常に重要な仕事道具です。
クッション性の高いスニーカーを選ぶだけで、膝や腰への衝撃が和らぎ、足の疲れが驚くほど軽減されます。
安価なものよりも、スポーツメーカーが開発したウォーキングシューズやランニングシューズなど、衝撃吸収に優れたものを選びましょう。
園内履きも、自分の足の形に合ったものを選び、適宜インソールを交換するなどして快適な環境を整えることが大切です。
精神面のセルフケアも体力維持には不可欠
「病は気から」という言葉があるように、精神的なストレスは肉体的な疲労を増幅させます。
心が元気であれば、多少の疲れは乗り越えられますが、心が折れていると、少しの肉体労働でも耐え難い苦痛になります。
ストレスが身体を硬直させ、それがさらなる疲労を招くという悪循環を断ち切りましょう。
・「完璧」を目指さない勇気
全ての業務を完璧に、常に全力投球で行おうとすると、すぐにガス欠を起こします。
保育の質は、保育士が笑顔でいられるかどうかに大きく依存します。
時には「今日は怪我なく無事に一日が終われば100点」と自分を許してあげることも必要です。
手を抜くのではなく、力を抜くポイントを知ることが、プロの保育士として長く働く秘訣です。
優先順位をつけ、重要度の低いことは明日回しにする勇気も、体力を守るためには必要です。
・プライベートの時間を確保する
仕事のことばかり考えていると、脳が休まりません。
趣味の時間や友人と過ごす時間など、保育とは全く関係のない世界を持つことで、リフレッシュが図れます。
脳を別の刺激に触れさせることで、自律神経が整い、肉体的な疲労回復も早まります。
オンとオフの切り替えを明確にすることで、仕事中の集中力が高まり、結果として無駄な動きやミスを減らすことにつながります。
休みの日はしっかりと「保育士の私」を脱ぎ捨てて、一人の人間として楽しむ時間を大切にしましょう。
どうしても辛い時は「環境」を変える選択肢も
どれだけ体力作りを頑張り、動き方を工夫しても、どうしても限界を感じる場合は、その「環境」に問題があるかもしれません。
個人の努力だけで解決できない構造的な問題が潜んでいる可能性があるからです。
自分の体力のなさを責める前に、現在の職場環境を客観的に評価してみることも必要です。
園の体制や人手不足が原因ではないか
一人あたりの受け持ち人数が法定制限ギリギリであったり、それを超えていたりする場合や、休憩が全く取れないような過酷な労働環境であれば、個人の努力で体力を補うのには限界があります。
慢性的な人手不足の園では、一人ひとりの負担が過剰になりがちで、本来二人でやるべき作業を一人でこなしていることもあります。
また、有給休暇が取れない、残業が常態化しているといった環境では、身体を休める時間が物理的に足りません。
このような環境で無理を続けると、取り返しのつかない健康被害を招く恐れもあります。
自分の体調不良が「努力不足」によるものなのか、それとも「環境の酷さ」によるものなのかを見極める冷静な目を持ってください。
保育方針と自分の体力のミスマッチ
保育園にはそれぞれの方針があります。
例えば、毎日長距離の散歩や激しい戸外活動を推奨する「運動重視」の園もあれば、室内での創作活動や落ち着いた知育保育を中心とする園もあります。
また、大規模園で常に大勢の子どもを追いかける環境もあれば、小規模園でゆったりと関わる環境もあります。
自分の体質や体力の限界に合った保育方針の園を探すことは、逃げではなく、プロとしての環境選択です。
もし、今の園のスタイルが自分の身体に合っていないと感じるなら、転職を検討するのも賢明な判断です。
自分の得意分野や持続可能な働き方ができる場所へ移ることで、保育士としてのキャリアをより長く、幸せに続けることができるかもしれません。
なお、企業内保育所なら少人数保育で体力的負担が小さいと言われています。気になる方はこちらの記事もご覧ください。
最後に:一歩ずつ、疲れにくい自分へ
保育士は、子どもたちの未来を作る尊い仕事です。
その仕事を「体力のなさ」という理由だけで諦めてしまうのは、非常にもったいないことです。
体力は、正しい知識と少しの習慣、そして適切な環境選びで、何歳からでも改善していくことができます。
まずは、今日一日の終わりにゆっくりお風呂に浸かることから始めてみませんか。
そして、明日の朝食に卵を一品足してみる。そんな小さな積み重ねが、数ヶ月後のあなたの身体を確実に変えていきます。
一気に全てを変えようとせず、できそうなことから一つずつ取り入れていくのが継続のコツです。
体力がついてくると、心に余裕が生まれ、子どもたちの可愛らしさをより深く感じられるようになります。
身体の辛さが軽減されれば、自然と笑顔も増え、子どもたちとの関係性もさらに良くなっていくでしょう。
笑顔で「先生!」と駆け寄ってくる子どもたちのために、まずは自分自身の身体を大切にケアしてあげてください。
あなたは十分によく頑張っています。
焦らず、自分のペースで、長く続けられる保育士の道を歩んでいきましょう。
いかがでしょうか。
この記事が、体力的な不安を抱えながらも、保育の現場で奮闘する皆さんの励みになれば幸いです。
もし、今の環境で頑張り続けるのが難しいと感じたら、まずは深呼吸をして、自分の心と身体の声に耳を傾けてみてくださいね。あなたの健康と、保育士としての豊かな未来を応援しています。










