仕事を休みがちな保育士が考えること
保育園に出勤しなければならないと分かっていても、どうしても体が動かない。
そんな朝を繰り返す自分に、強い罪悪感や焦りを感じていませんか。
この記事では、仕事を休みがちな保育士さんが心の中で抱えている葛藤や、そうなってしまう背景にある原因、そして一歩踏み出すための考え方を詳しく解説します。
現状を打破し、自分らしい働き方を見つけるためのヒントとしてお役立てください。
休みがちな保育士が抱える終わりのない罪悪感の正体
保育士という仕事は、子どもたちの命を預かる非常に責任の重い専門職です。
だからこそ、一度休みがちになると、その精神的な負担は他職種以上に重くのしかかります。
単なる「体調不良」という言葉では片付けられない、複雑な心理状態について深く掘り下げていきましょう。
毎朝の葛藤と欠勤連絡までの凄まじい恐怖
休みがちな保育士さんにとって、一日のうちで最も苦痛な時間は、職場に欠勤の連絡を入れるまでの数十分間です。
スマートフォンの画面を見つめながら、布団の中で激しい動悸を感じている方も少なくありません。
「今日は頑張って行けるかもしれない」という微かな希望と、「やっぱりどうしても体が動かない」という絶望が、波のように押し寄せます。
・自分が休むことで現場のシフト調整がどうなるか
・誰が自分のクラスの担任代行に入るのか
・電話口で園長や主任にどんな声色で対応されるか
・電話を切った後に職場で何を言われるか
こうした不安が頭を巡り、受話器を持つ手が震えることもあります。
ようやく電話を終えた後も、安堵感は一瞬で、すぐに「また職場に迷惑をかけてしまった」「私はなんて無責任なんだ」という激しい自己嫌悪が襲ってきます。
休んでいる最中も、園のタイムスケジュールが頭に浮かび、「今ごろは給食の準備中だ」「今は午睡の時間で、残された先生たちが連絡帳を書いているはずだ」と、心が休まる瞬間がありません。
同僚や先輩保育士の視線に対する疑心暗鬼
保育現場は、一人の欠員がチーム全体にダイレクトに影響を与える環境です。
そのため、休みがちな状態が続くと「周りの先生たちからどう思われているか」が最大の懸念事項になります。
「あいつはやる気がない」「また仮病ではないか」「私たちがこんなに忙しいのに」……。そんな声がどこからか聞こえてくるような錯覚に陥ることもあります。
特に、人間関係が密接で、お互いの動きを常に把握し合わなければならない保育の現場では、心理的な距離感が重要です。
一度「申し訳ない」という気持ちが強くなりすぎると、次に園に行った時にどんな顔をして挨拶をすればいいのか分からなくなります。
謝罪の言葉一つとっても、「わざとらしいと思われないか」「許してもらえるだろうか」と考えすぎてしまい、出勤のハードルがさらに高くなるという負のループが完成してしまいます。
子どもたちへの裏切りという自己否定
保育士が最も心を痛めるのは、やはり受け持っている子どもたちの存在です。
昨日まで「先生、大好き!」と駆け寄ってきてくれた子どもたちが、自分の不在によって不安な思いをしていないか。
楽しみにしていた行事の練習が滞っていないか。そうした思考が止まりません。
「先生、今日はどうしたの?」と子どもたちが不思議そうに他の先生に尋ねる光景を想像するだけで、自分が子どもたちを裏切った大人のように思えてしまいます。
保育士としての矜持があるからこそ、行けない自分を「プロ失格」だと決めつけ、深く傷ついてしまうのです。
なぜ「休みがち」になってしまうのか?背景にある真実
そもそも、なぜあなたは休みがちになってしまったのでしょうか。
それは決して「性格が弱いから」ではありません。保育現場を取り巻く過酷な環境や、保育士特有の性質が複雑に絡み合っています。
慢性的な人手不足による「休めない」プレッシャー
多くの保育園では、最低限の配置基準を満たすだけで精一杯の運営がなされています。
一人でも休めば、フリーの先生が入り、事務作業が止まり、休憩時間が削られる。
そんなギリギリの状態で回っている現場において、「休むこと」は一種のタブーのような空気感すら漂っています。
このような環境では、本来休むべき程度の体調不良や精神的な疲弊であっても、無理をして出勤し続けることが美徳とされがちです。
しかし、無理を重ねれば、いつか必ず心身の限界が訪れます。糸が切れたように動けなくなるのは、これまであなたが限界以上に頑張り続けてきた反動に他なりません。
多種多様な感染症と肉体的な疲弊
保育士は、子どもたちが持ち込むあらゆるウイルスや菌に曝露される仕事です。
特に新人から数年の間は、まだ体内に免疫が十分にできておらず、インフルエンザ、ノロウイルス、手足口病、RSウイルスなど、立て続けに罹患することも珍しくありません。
・治りきらないうちに人手不足を懸念して早退・復帰する
・体力が戻らないまま激しい肉体労働(抱っこや中腰の作業)を行う
・睡眠不足のまま早番や遅番のシフトをこなす
こうした身体的な負荷が蓄積すると、自律神経が乱れ、朝起きられない、体が鉛のように重いといった症状として現れます。
これは気合の問題ではなく、純粋な身体の防衛反応です。
高い感受性とメンタルヘルスの悪化
保育士という職業を選ぶ人は、もともと感受性が豊かで、他者の気持ちに敏感な優しい性格の方が多いです。
それは保育において大きな武器になりますが、一方でストレスを吸い込みやすいという側面も持っています。
保護者からの厳しい要望、同僚との微妙な人間関係、子どもたちの発達への不安など、多方向からのプレッシャーを一人で受け止めてしまうのです。
知らず知らずのうちに、適応障害やうつ状態、燃え尽き症候群(バーンアウト)に陥っているケースも少なくありません。
心が「これ以上は危険だ」とアラートを出している結果として、体が動かなくなっている可能性を無視してはいけません。
休みがちな自分を責めないための心の処方箋
今、あなたに必要なのは、自分をさらに追い込むことではなく、自分を許してあげることです。
考え方を少し変えるだけで、心にかかっている重石を軽くすることができます。
「行けない自分」を「コンディションの不良」と捉える
今の状態を「人間としての欠陥」ではなく、あくまで「一時的なコンディションの不良」として捉えてみましょう。
例えば、激しい骨折をしていれば、誰も「気合で歩け」とは言いません。心や自律神経の不調も、目に見えないだけでそれと同じくらい深刻なダメージを負っている状態です。
「私はダメな人間だ」と主語を自分にするのではなく、「今の私のシステムは、休養モードに入ってしまっている」と客観的に観察してみる。
自分自身を責めるエネルギーを、少しでも体を休めるエネルギーに転換することが回復への近道です。
組織管理の問題と個人の責任を切り離す
あなたが休んで現場が大変になるのは、厳しいようですが「園の管理体制」の問題であって、あなたの個人的な罪ではありません。
本来、健全な組織とは、誰かが急に休んでも安全に運営できるよう、バッファ(余裕)を持って人員配置を行うべきものです。
そのバッファがない状態で運営しているのは経営側や管理職の判断であり、一担任や一職員がその全責任を背負う必要はありません。
「今は同僚に甘え、自分が元気になった時にまた恩返しをすればいい」と、割り切る思考を持つことが大切です。
「完璧な保育士像」という呪縛を解く
保育士は常に明るく、元気で、子どもたちの前で笑顔でいなければならない。
そんな理想像を自分に課しすぎていませんか?
先生も人間です。悲しい日もあれば、動けない日もあります。
完璧でない姿を見せることも、ある意味では子どもたちに「人間らしさ」を伝える教育の一部かもしれません。
・今日は子どもたちと一緒に怪我なく過ごせればいい
・今日は連絡帳を一枚でも丁寧に書ければ十分だ
・今日は園に到着できただけで自分を褒めてあげよう
このように、ハードルを地面に着くくらいまで下げてみてください。
完璧を目指すのをやめた途端、不思議と足取りが軽くなることもあります。
今の職場を離れるべきかどうかの判断基準
休みがちな状態が続いているのは、今の職場があなたにとって「合っていない」というサインかもしれません。
今の場所で踏ん張るべきか、それとも新しい環境を探すべきか、その判断材料を整理しましょう。
環境そのものに問題がある場合
以下のような特徴がある職場は、あなたの努力不足ではなく、環境そのものに原因がある可能性が高いです。
・サービス残業や持ち帰り仕事が慢性化している
・特定の職員に対するいじめや、お局的な立場の人の権力が強すぎる
・休憩時間が全く取れず、食事も子どもたちを見ながらで休まらない
・「熱があっても出勤するのが当たり前」という風潮がある
・園長や主任に相談しても「あなたの気持ち次第だ」と精神論で返される
こうした環境で無理を続けても、あなたの心が削られていくだけです。
この場合は、休む頻度を減らす努力をするよりも、環境そのものを変える決断を優先すべきです。
自分の適性と現在の職務内容のミスマッチ
保育士という仕事自体は好きでも、その「形態」が合っていない場合もあります。
例えば、大規模園での騒がしい環境が苦手な人が、100名以上のマンモス園で働いていれば、脳が常にオーバーヒート状態になります。
逆に、小規模園で密接すぎる人間関係に息苦しさを感じる人もいます。
自分の性格や得意なこと(静かに絵本を読むのが好き、外で元気に走り回るのが好き、事務作業が得意など)と、現在の職場が求めている役割がズレていると、それは無意識のストレスとなって「休みがち」という行動に現れます。
自分の特性を再確認してみましょう。
新しい一歩を踏み出すための具体的な選択肢
もし「今の園ではもう限界だ」と感じたとしても、保育士のキャリアが終わるわけではありません。
むしろ、そこからがあなたにとっての「本当の保育士人生」の始まりになることもあります。
働き方のスタイルを変えてみる
正社員としてフルタイムで働くことだけが選択肢ではありません。
一度心を休めながら、徐々に自信を取り戻す方法も検討してみましょう。
・派遣保育士:勤務時間がきっちり決まっており、担任を持たず補助業務がメインになるため、精神的な負担が大幅に軽減されます。
・パート・アルバイト:週数日、短時間から始めることで、保育の感覚を保ちつつプライベートの時間を確保できます。
・ベビーシッター:集団保育ではなく、一対一でじっくり子どもと向き合えます。今の疲弊した心には、この働き方が最も癒やしになることもあります。
保育のフィールドをずらしてみる
いわゆる「認可保育園」以外にも、保育士資格を活かせる場所はたくさんあります。
・企業内保育所や院内保育所:少人数で、行事が少なく落ち着いた環境が多いのが特徴です。
・学童保育:乳幼児とはまた違う、小学生との関わりを通じて新しい発見があるかもしれません。
・児童養護施設や障害児支援施設:より専門性の高いケアを求めるなら、こうした福祉分野も選択肢に入ります。
環境を変えることは、決して逃げではありません。
自分を最も活かせる場所を探す「攻めの選択」だと考えてください。
専門家のアドバイスを受ける
もし、朝の気分の落ち込みが激しく、私生活でも楽しみを感じられなくなっているなら、心療内科や精神科を受診することを強くお勧めします。
診断書が出ることで、休職という形で公的に休みを取ることができ、給付金(傷病手当金)を受け取りながら生活の不安を解消して養生することも可能です。
また、転職を考える際は保育専門のコンサルタントに相談するのも一つの手です。
園の内情を把握しているプロの視点から、今のあなたが無理なく働ける職場を提案してもらうことができます。
休み明け、または転職先での再スタートを成功させるために
心身が回復し、また保育の現場に戻ろうと思えた時、大切にしてほしいことがいくつかあります。
挨拶は短く、シンプルに
長期休み明けや転職初日は、誰もが緊張します。
過去の休みがちだった自分を恥じるあまり、長々と謝罪をしたり、卑屈な態度をとったりする必要はありません。
「ご心配をおかけしました。今日から一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします」という一言で、十分に誠意は伝わります。
大切なのは過去の謝罪よりも、これからのあなたの仕事ぶりです。
「NO」と言える自分を少しずつ育てる
休みがちになってしまった原因の一つに、「頼まれたことを断れない」というあなたの優しさがあったはずです。
新しい環境や復帰後の職場では、自分のキャパシティを意識し、無理な仕事は「今は難しいです」と伝えられるよう、少しずつ意識を変えていきましょう。
自分を守ることは、長く働き続けるための、プロとしての責任でもあります。
自分なりのストレス解消法を確立する
保育の仕事はアウトプットが非常に多い仕事です。だからこそ、プライベートでは徹底的にインプット(自分の心を潤すこと)に専念してください。
・美味しいものを食べる
・好きな音楽を聴く、ライブに行く
・全く別の趣味を持つ
・スマホを見ない時間を意図的に作る
仕事とプライベートの境界線を明確に引くことで、仕事でのストレスを家庭に持ち込まず、翌朝の「行きたくない」という気持ちを予防することができます。
まとめ:あなたの価値は、欠勤の数では決まらない
保育士という尊い仕事を選び、これまで子どもたちのために尽くしてきたあなたは、それだけで十分に価値のある存在です。
今、休みがちで苦しんでいるのは、あなたが真面目で、責任感が強く、そして少しだけ人より感受性が豊かだったからです。
自分を責めるのは今日で終わりにしましょう。
休むことも、今の環境から離れることも、全てはあなたが「あなた自身を守る」ための大切な決断です。
人生という長いスパンで見れば、今の停滞期はほんの一瞬に過ぎません。まずはゆっくりと深呼吸をして、自分の心と体を第一に考えてください。
あなたが心から笑って、また誰かと楽しくお喋りできる日が来ることを願っています。
どのような選択をしても、あなたの保育を愛する心がある限り、道は必ず開けます。一歩ずつ、まずは今日一日を自分のために穏やかに過ごすことから始めてみてください。
もし今の園で働き続けることに限界を感じているのであれば、今の悩みや希望をフラットな視点で相談できる環境を見つけることが、大きな救いになるはずです。
外の世界には、あなたの優しさを必要とし、もっと大切にしてくれる場所が必ず存在します。
今すぐ退職を決める必要はありません。
まずは「他にも場所はある」という事実を知るだけで、明日からの景色が少しだけ変わって見えるはずです。あなたの人生の主役は、園でも子どもたちでもなく、あなた自身なのですから。
自分一人で悩み続けて心が限界を迎える前に、今の環境以外の可能性に目を向けてみませんか。
今の状況を整理し、あなたにとって最適な働き方を一緒に考えてくれる相談先を検討してみることをお勧めします。










